エピソード8 その島で自給自足の生活体験をする

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イグアナはおとなしく危害は加えないと、現地で友達になったテイミーという青年に説明されても、最初の数時間はにわかに信じることができずに、不安を抱えながらもまず最初に我々がやったことは、住宅建築?である テントは何張かは持って行ったのだが、イグアナとの信頼関係がいまいち不安だったので、流木や流れ着いたロープなど使えそうなものを拾い集めることからやり始めた。 少しでもイグアナとのバリアを頑丈にしたいという思いからである。そうは言っても所詮は遊び感覚! 暑くて汗をかくとクリスタルのように透き通った海に飛び込みながらの作業は、日常の生活では味わえない、得も言われぬ解放感と一緒なので、いつしかイグアナの恐怖心も自然に薄れていった。 ジャックは水を得た魚のように、まるで子供が言うようなことを連発した。

極端なことを言えば、流木を集めて日陰を作るだけの建設作業?なのに、彼なりのやり方があるのだろう、砂に流木を差し込むことから、どんな手順でそれに流木を繋ぎ止めていくか、果てはその結び方まで指導してくる。“まてまて、俺には人生経験がある、この場合はこうした方がより完璧だ”。 といった具合に! そこにはあの気難しいジャックの面影は微塵もない。 それはそれでなんともほほえましく、みんな童心に帰って流木を集め、言われた通りに作業をし幸せな時を過ごしていたと思う。結局は最初の構想とは大きく異なり、焼けつくような太陽光を避けるだけの日陰を作っただけの簡単な工作物に終わったけど、何にもない砂浜にまがりなりにも涼しい空間を作ったという満足感は何物にも代え難い経験だった。

およそ人間のいかない僻地とも思えるところまで来ると、そこにたどり着くまでの苦労はあるけれど、山深く奥地に入るのとは違って、海は何となく安全性という点に於いて安定しているように思う。 特殊な危険生物の対処法さえ知っていれば、比較的安定した自然がそこにあるし、なんとなく落ち着けるような気がする。やはり、ジャックも言っているように、”全ての生命は海から始まって進化したものであり、人間もまたそうである。 海に抱かれていれば、まだ意識のなかったころ母に抱かれていた時の安らぎが無意識のうちに感じられるのだ!“ そう信じたくなる気持ちになってくるから不思議だ。 そうやって私たちは数日間、自然と同化した時間を過ごした。 こういう体験をすると、幸せとは一体どういうことなのかということを考えさせられてしまう。

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